40歳になってから始めたトレイルランニング、
少しは成長を感じられてきたこともあり、
2015年あたりから大会での総合優勝を目指しました。

あたり前ですが若い人にはスピードで到底かなわないので、
自分が得意な険しい山岳コースを求めて各地の大会に出場しました。

総合優勝を狙う際は、なるべく速い人が集まらないようなレースを
選択するものの、自分より速い人は日本中にいくらでもいます。
表彰台に上がっても2位・3位、または優勝争いに絡めず１桁後半、
といった順位をウロウロしていました。

40代も終わりが近づき、もう優勝を味わうことはできないのか、
そう思いつつあったのですが、つい先日ようやく実現できました。
優勝を志してから、実に７年の歳月がかかりました。

レース開催地は徳島県、海岸沿いの急峻なアップダウンのある
山岳地で、自分が好きなコースです。距離18キロで、
1,300mの登りと下りがあります。

スタートしてすぐ、舗装路の傾斜地を駆け上がっていくのですが、
そこで周りの選手を見回して今日のライバルは２名に決定。

先行する速い人（最終２位）、若くて速そうな人（20代最終４位）、
と自分。表彰台には登れそうだなと思いつつ、
今日の目標は優勝と思い出しながら、２番手で山区間に入ります。

山区間に入ると徐々にトップとの差が開いてしまい、ついには
姿が見えなくなりました。前半にコース最高地点があるので
そこまで見える位置で戦えれば何とかなるかと思ったのですが、
プランAはあえなく崩壊。プランBの「とにかく頑張り続ける」に
切り替えました。とはいえ、別カテゴリの後方グループを
追い抜かしながらの細い山道は、踏破に難儀しました。

気持ちがリフレッシュできたのは、約９kmの中間地点、
補給エイドに降りてきたタイミングです。エイドのお姉さんが
「トップもそんなに離れていないよ」って声を掛けてくれました。

「そんなに」がどれくらいかはわかりませんが、どちらにしても
「とにかく頑張り続ける」しかないので、前方に見える
白いTシャツの人を何度も「あの人がトップかな？」と思いながら、
バテない程度にプッシュし続けました。
白いTシャツの人ってすごい多くて全て誤認だったのですが、
結果的にはそれが良かったのかもしれません。

トレイルを登っても下ってもまったくトップの背中が見えない中、
あと３キロ程の地点で待望のトップを視認、
白いTシャツだけでなくパンツや走法からも、
しっかりライバルを確認することができました。

「後ろから自分が来ているとは思っていないはず」と考えて、
しばし後方からライバルの状態を確認、階段を登る際のフォームや
自分とのスピード感の比較で、ワンチャン何とかなるんでは
ないかと考えました。来たるべきラスト勝負に備えて、
エネルギー・水分補給はしっかりしていたので、
あとはチャンスを伺います。

少しずつ前を詰めていったのですが、
つづら折りの上りコースでどうやら気づかれた様子・・・
残り２キロちょっとくらいで一気に前を捉えに行きました。
下りパートでスピードを上げて一気に近づいていったら、
サッと抜かせていただくことができました。

その後は交わした選手に追走を諦めてもらうために、
上りも下りもとにかく必死に逃げました。心臓が飛び出そう！
というのはこういう時のことを言うのかもしれません。

自分史上で最大に頑張って２キロ近く逃げたでしょうか、
交わした選手が見えなくなったと思ったら、
今度は自分の脚がピクピクしはじめました。
左腿、右腿、順番に今にでも攣ってしまいそうな気配を感じます。

完全に攣ってしまって優勝のチャンスを逃さないようにと、
効くかどうかわかりませんが脚を拳で叩きながら、
わずかにスピードを緩めつつゴールを目指しました。

ゴールまであと数百mくらいになったところで、
先程交わした選手がすごい勢いで追いかけてきてきました。

こうなったら、根性のみ。
最後の力を振りしぼって、猛ダッシュのラストスパート。

いったんスピードを緩めていたおかげで脚も何とか持ちこたえ、
１番でフィニッシュできました。15秒差でした。

死ぬほどキツかったけど、
死ぬほど嬉しかったです。

優勝って、ものすごく大変なんですね、胸に染みました。